制作秘話
全曲を作品順に並べ、YouTube概要欄にみゅー自身の制作記録がある曲だけ、本文へリンクしています。
曲目
真実の口
- 1. おてがみ
- 2. 椅子と彼女
- 3. ALLY
- 4. ちゃっきー21
- 5. Maricha
- 6. Go Up In The Smoke
- 7. 就職活動
- 8. 君の名前
- 9. 明日も君に会える
- 10. 笑顔のち夏
- 11. 真実の口
- 12. ライブ告知
約束の場所
- 1. 渇いた水槽
- 2. 我が奔走
- 3. Life goes on
- 4. Beauty is Truth
- 5. vital
- 6. 新しい命
- 7. ともしび
- 8. 秋の終わり
- 9. 冬の鼓動
- 10. Promised Land
- 11. 一歩ずつ
Tokyo Walker
- 1. はじまり
- 2. Thank you,Sunshine
- 3. ブリブリブルース
- 4. どん底
- 5. 離れたくない
- 6. 独りじゃない
- 7. 君とcaffe
- 8. インスタントライフ
- 9. Tokyo Walker
- 10. しあわせ
茜空
- 1. In my life
- 2. フレッチャー
- 3. あの日あの時さよなら
- 4. 女心
- 5. disturb
- 6. 明日を待ってる
- 7. 元気日和
- 8. I love you, I need you
- 9. 茜空
- 10. receptor
アルバム外/Demo
- 1. ソフトボール応援歌
- 2. Synchronicity(Demo)
- 3. さよならは目の前に
本文
おてがみ
記念すべきアルバムの一曲目として書き下ろした曲。このアルバムのテーマは「本当の気持ち」。普段なかなか言えない、照れ臭さで誤魔化さない、上辺だけの嘘でなく、社交辞令でもなく、真実の気持ちを、歌になら込めて歌える、そう思って作り始めた。
すでに、#9「君の名前」, #10 「笑顔のち夏」を立て続けに先行シングルとして発表していたが、むしろこれらの代表曲よりも前にできた、上京したての期待と不安、嘘や裏切りで傷つきながらも、どうにかこうにか生きてきた赤裸々な成長記録でもある。まだティーンエイジャーの青さが抜けきらない。
僕は真実を歌いたい。そう決意して、純粋無垢な気持ちでできてきた荒削りな作品たち。その多くが、当時住んでいた6畳一間のボロアパート(家賃4万円)の孤独な夜に誕生した。「東京だ!」と意気込んで出てきて最初に住んだ場所は、地元より田舎だった。録音機材は、なけなしのお小遣いで購入したマルチトラックレコーダー(MTR)。デモテープはまだ健在だったMDウォークマンで録っていた。安いエレアコとおもちゃのキーボードで。エレキギターやピアノは部室にあったものを借り、当時はまだベースが弾けなかった。ハーモニカは地元から持ってきた、父からのお下がりだ。
一曲目は、そんな郷愁を誘うハーモニカで始まる。父は、僕が東京で一人暮らしすることには反対こそしていなかったが、「また自分と同じ苦労をさせるのか」と随分と心配してくれたものだ。予想通り、苦労の連続だったよ。そんな父へのアンサーソングでもある。(ちなみに父は今でも健在であり、関係も良好)。
着想は、小学生の時に読んだ、アーノルド・ローベルの『がまくんとかえるくん』シリーズの「おてがみ」。地元の親友のまーちゃんに、この物語の一節を添えて紙のお手紙を書いたことがある。帽子をもらったのは事実で(僕が歌うことは全て真実だから!)、プレゼントじゃなくて、自分がかぶっていたのを「それみゅーにあげる」と言ってなぜかくれた。くれたのは同級生のみどりちゃん(「冬の鼓動」のジャケット画像を描いてくれた人)。「君がくれた勇気は」の部分は、「君の名前」「笑顔のち夏」の主人公のゆうきちゃん(みどりちゃんの親友)のことでもある。
ギターもハーモニカも歌も、せーのドンの一発録り。ソファーがきしむ音が効果的に入ってる。ちょいちょいギターの演奏ミスが逆にいい感じに仕上がってる。マイクのアナログ具合も好き。
椅子と彼女
※ここでいう彼女というのは"She"のことで、"Girl friend"のを指す意味ではございません…
典型的な、歌詞からできたタイプの曲。具体から入ってちょっと一般化し、一番と二番でアナロジーを繰り広げ、「結局イスってなんのメタファーだったんだろう?」と、ちょっとそういう村上文学にハマっていた頃の歌詞。イスというのは、極めてプライベートでパーソナルな心のあり方の象徴なのだろう。「無条件で未来を信じられる」。
19歳の誕生日にイスを買ったのは「真実」。札幌のビックカメラで買って抱えて帰った。B'zの「いつかのメリークリスマス」っぽいでしょ。「彼女」というのは架空の存在(伝説上の生物)ではありますが、モデルとなったのは部活の憧れの美人先輩。ある日うち(「ボロアパート」)にもう一人の美人先輩と突然遊びにきて、泊まっていったことがあったけど(もちろん僕は何もしない)。翌朝、そのイスに、僕のイスに、その先輩がちゃっかり座っているのを見て、ズッキューンときた。一気に歌詞ができた気がする。「彼女がイスに座って微笑んでいる」。その後、その先輩に捧げたのが #7 「就職活動」。「遊びたい時にも遊べない」。
楽曲は、エレキギターっぽい音色だが実はこれはエレアコにエフェクトをかけてる、ベースは西尾さんに借りたんだったと思う。コーラスワークや、歌詞で韻を踏むのが少しずつ上手くなってきたようだ。ドラムはまだ探り探り、メトロノーム替わりだ。歌い方は当時大好きだった吉井和哉風。
ちなみにその時買ったイスは結構長持ちして、札幌から東京へ来て、さらに3回の引越しに耐え、結局10年くらい使用した。古びてギシギシいうことはなく、まだまだ使えたけど次の引越しを機にサヨナラした。
ALLY
日本語に訳すならこう。「ヤツは名うての怪盗アリー」「ヤツは目利きの怪盗アリー」。どうしても日本語がメロディーにうまく乗っからなかったので、英語で作ったシリーズ(英作文には苦労した)。
あの子に彼氏がいるのは知っていて、でも大してラブラブそうでもなく。そんなある夜、彼女がボソッと「寂しいよ」と俯き顔でマジ目に呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。その瞬間ズッキュンと来て、僕の中で何かが発動した。彼の本名も顔も知らないが、あだ名がアリーだと知る。君に奪われて初めてその価値が分かった宝物を今奪い返しに行くよ(ちゃんと大事にしろよ)という内容。見習い怪盗もうにーとは僕のこと。こういう寓話っぽい歌詞は、あの子が好きだったバンプの影響。情熱に演奏技術が伴わず、演奏は、デモテープそのまま。
ちゃっきー21
ドラム女子の千秋のあだ名はちゃっきー。ちゃっきーの21歳の誕生日会でみんなで部室に集まった時に、その場で10分くらいで即興で作って、その場にいた全員でみんなで演奏した。幸い楽器弾ける人がたくさんいて、思いの外大合奏になった。その時の雰囲気をなるべく出したかった。今みたいに簡単に動画が撮れればよかったんだけど(スマホもない時代)。自分の作った曲でみんなが歌ったり演奏したりしてくれたのがすごく嬉しかった。記録がない分、鮮明に覚えているよ。最初「秋は素敵だ 僕は秋が好き」というフレーズで作り始めて、流れで次が「笑顔が素敵だ 僕は千秋が好き」ってなってしまって、それはマズい笑というツッコミが入り、急遽「みんな秋が好き」「みんな千秋が好き」というふうに変わりました!
Go Up In The Smoke
韻を踏むというのはこういうこと、ここに極めり、というお手本のような歌詞。階層横断的に散りばめられた言葉遊びを見つけて、ぜひ楽しんでほしい。島本さんにして、「あなた天才だと思ったわ」と言わしめたものだ。
さて、まりちゃの話をしよう。 こちらも併せて聞いてほしい。https://youtu.be/n9_tiM9FcMg
立て続けに裏切られ、東京の制裁を受けた末に陥った人間不信。心に張り付いたその氷も徐々に溶け始めたとある春、新学期。僕は一つ学年が上がって先輩に。新入生の彼女とは、いつかどこかですれ違って、その人懐っこい笑顔にまさに一目惚れ状態。とはいえ、なにも情報がない状態で、どうやってお知り合いになることができようか、いやできまい。情報収集だっ! こうして僕は再び生きている意味を取り戻す。こういう戦略頭脳ゲームがたまらなく楽しいと思ってしまうタチ。例えば、調査の末、まず名前がわかった。ここでは仮に、まりちゃと呼ぼう。まりちゃはダンスが得意で活発で、バレーボール部に所属していることがわかったり。出身高校が分かったり。だいたい住んでいるところが分かったり(断じてストーカーはしてない)。共通の知人がいることがわかったり。最終的にはどうにかしてメールアドレスを聞き出したり…
でも、悪名高き「キャンプ」の一員だったということも分かったり… とはいえ、キャンプの新入生名簿のおかげで情報を掴むことができたんだから感謝しておかないとだね。
お礼にキャンプの紹介もしておこう。これは大学に蔓延るいわゆるなかよし"飲みサー"のようなものと僕は認識している。中の人は断じて違うと言い張るのかもしれないが、外面的にはそうだ。何歩譲ってもそうだとしか言いようがない。一年のちに入学してくる島本さんも実はこのキャンプの一員になる。そしてこともあろうか幹部になっていく。僕が(個人的に)対峙していた"ウェイ"の中心人物になっていく。幹部として成長していく。皮肉なことに。キャンプが僕から全てを奪っていった。でも分かってるんだ。深層心理的には、本当は僕もその仲間に入ってウェイウェイしたかったんだ、できるものならね。
純粋で美しいままだったあの子も、あの子も、あの子も、みんなキャンプ色に染められて、派手になり、ケバくなり、傲慢になっていく。異分子は排除され、内輪の価値観や合意が形成されていく。キャンプにあらずんば人にあらず。もう見ていられない。悲しい。哀しい。
そして僕は自ら排除され、人知れず去る。勝手に傷ついていく。小さな自己破壊欲求はタバコの煙になって昇華されていく。思えば色んなタバコを吸ったものだ。ねぇキミ、もう消えちゃうのかい。あと一本だけ。もう少しだけ、燃やしていたい。いつか終わると分かっていても。愛情も、情熱も。そういう歌。
就職活動
生まれてこの方、「就職活動」というものをしたことがない。大学に入ったのも研究をするためで、研究職でやっていくものだと信じて疑わなかった。そんな「夢を見ている」僕からみた、街の風景。リクルートスーツに身を包む人たちへのささやかな応援ソング。経験者から見たら、ちゃんちゃらおかしいかもしれない。自己中だとすら思う。
僕の"椅子"にちゃっかり座っていた先輩に心を打ち抜かれて(https://youtu.be/yyEpy5mQyBQ 参照)、また久々に会ったらものすごく大人びて見えて。それはきっと多分、就活で髪を黒くしたり、ナチュラルメイクのせいだったのかもしれない。引退してからなかなか会えなくなってしまって、「またみんなで遊びましょうよ」と言っても「就活が忙しいから」と…
心底応援する中で、何もできない僕の、僕なりの成果が音楽だった。いつか「祝いに行く」。
時間が合って会えた折、「就活って辛いですよね?だって…」と問いかけると「みゅー、意外と楽しいもんよ」と、微笑みながらいかに就活が楽しいか語る先輩。それでも僕は「どんな御託を並べても…」と心の中で思っていた。
きっとこの歌は、そうじゃないんだ。不幸なのは僕の方だったんだ。遊びたい時にも遊べない、逢いたい人にも逢えない、マッチ売りの少女は僕の方だったんだ。彼女が手の届かないものになっていくようで、先輩への憧れが、そっと打ち砕かれていく音を感じていた。季節は巡り、また春がやって来る。僕は僕の人生を生きねばならぬ。
君の名前
名前というのは尊いものだ。日本語では「真名」を知られたり、気軽に呼んではいけないという風習があるらしい。だから僕は、人の名前やそれをつけた、また、漢字を選んだあるいは選ばなかった人のセンスやエネルギーはすごいものだと思う。そして、他ならぬ自分はその名前を、生まれてこの方何度も呼ばれ、読み書きする。そして(たとえ結婚したとしても)死ぬまで付き合っていくものだ。
そういう思いで、「君の名前=〇〇ちゃん」に着想を得て、さらにそこにギターを掛け合わせることで、ベタベタな展開の歌詞を書いてみた。ハモると守る、伴奏と伴走。これでもかってくらい、褒め称える。誰が否定しようと、僕は肯定し続ける。
この歌の主役は、このアルバム「真実の口」でかなりの頻度で登場する同級生のゆーきちゃんだ。#3 ALLY、#8 君の名前、#9 明日も君に会える #10 笑顔のち夏 #11 真実の口。後半にかけて怒涛のラッシュをたたみかける。僕にとってはいわば、"確変"突入状態だ。完全に創作に火がついた状態。 人生でも最もテンションの高い瞬間だったのかもしれない。まさに、「苦悩を突き抜けて歓喜に至る」である。
ALLY氏 https://youtu.be/5Sw-SgpO7Dg が"彼氏"として登場。「笑顔のち夏」は、彼女の誕生ソングだけど、歴代でも屈指の最高傑作なので、ぜひお聞きください。 https://youtu.be/Y16mE4JT5Y4
名前に限らず、本当に価値のあるいいものを持っているのに、それを自己肯定できないのは悲しい。誰よりも僕がその価値をわかっているからこそ。どうにかして、彼女を輝かせたいと思い始める。これをヒーロースクリプトというのかもしれないが。
この歌に出てくるような会話が自然と出てくるくらい僕と彼女はなんでも言い合える深い仲だったし、一緒にバンドも組んでいたし、バンプやトライセラが好きだったし、家も近所でお互い遊びに行き来したり、熱が出た時は看病してくれたり、料理も作ってくれたり。「ゴール目指さないか」は、伴走から導かれる枕詞のような修辞法から出てきたに過ぎないんだけど、一部ではこれは愛の告白なのではとウワサになったり。僕は僕で隠す気もなく、堂々と愛情表現をしたりしていた。なかなかにベタな約束された展開なのだが。自分ではまだ茶化すような気持ちもあって、この曲を書いた当時は、これが単なる防衛機制なのか自暴自棄なのか役割演技なのかよくわからないでフワフワと浮かれていた。
明日も君に会える
フルオーケストラの壮大なラブソングもいいが、僕はAメロがサビみたいなこういう小曲が好きだ。ここで描いているのは本当に取るに足らない日常だ。
あれは、5月3日のこと。個人練と称して、ゆーきちゃんと二人きりで集まって楽器とコーラスの練習をしていた。幸せな時間だ。歌詞にもある通り、さりげなく、明日もやる?って聞いたら、もちろんだよって。このやり取りだけで、ラブソングができるには十分だ。翌日は5月4日。いまでこそ祝日だが、当時は、連休の中日。「週末じゃない休日でもない」というのはそういうこと。翌日が待ち遠しくて、秒で曲と歌詞が出来上がっていく。僕の悩みは「明日着ていく服は何色にしようかな」。微笑ましい。
この頃までには、自分の気持ちに歯止めが効かなくなってきていて、ライブでトライセラのラズベリーを一緒にやった時には、「君を愛してる Oh yeah! Oh yeah!」の部分で、ギターに振り返って指さしてみたりして。そのあと彼女のギターソロが続く。どこまでがライブの演出で、どれくらい本気だかは分かりづらかったかもしれないけど、精一杯の愛情を表現していたつもりだ。
後で知ることだが、(当時知っていた?)彼女はこの春に彼氏こと ALLY氏と別れている。"昨日までは毎日雨模様"というのはそういうことだったのかな。少なくとも「笑顔のち夏」はそういうモチベーションで書いているようだ。(https://youtu.be/Y16mE4JT5Y4 参照。)そう言われてみると、ゴールデンウィークに連日会えたことの説明がつく。彼女は彼女で、寂しかっただけなのかもしれない。
この時、気持ちを伝え切らなかったのは、そういう遠慮した気持ちがあった(のか、まだ彼氏がいると信じていた)からなのかもしれない。少なくともただの浮かれポンチではなかったようだ。あとは、他ならぬ僕自身が決心を固める必要がある。それだけだ。「真実の口」に手首を差し入れる時は近いようだ。
笑顔のち夏
沖縄料理店「ニライカナイ」でバイトしていた夏生まれのあの子が、太陽のように眩しい笑顔で「お待たせしました」とオーダーを運んできてくれた時にひょっこり生まれた曲。あれはオリオンビールだったか泡盛だったか。「君がこの世に生まれた時に 夏が始まったんだ」。そんなあの子が、春の終わりに彼氏と別れて落ち込んでいたと風の噂で聞いたので、励ましたくて必死で作ったお誕生日ソング。「笑顔の千夏」ではなく「笑顔のち夏」。「雨のち晴れ」と同様に。根底にあるのは「葉っぱのフレディ」の死生観。「春の次に夏が来るように」。「東京も夏っぽくなりました」というフレーズは、GRAPEVINEの「今夏の香りがしました(風待ち)」から。ふと敬体になるのってお手紙みたいでオシャレじゃない?「君も大人っぽくなりました」というフレーズは、その春東京に出てきた妹の成長を思って出てきた言葉な気がする。どういうわけか雨のパチンコ屋で…「あの娘も彼も僕も君も 同じ分だけ歳を重ねている決して独りぼっちじゃない」というフレーズは、自分自身の誕生日に実際に思ったこと。母が同じ誕生日だから余計にそう思える。コード進行がピカイチ美しい。同期がみゅーの曲は難しいと言っていた、そのギターを自分でも猛練習して撮り直した。確かに難しい!
真実の口
アルバムの中では一番最後にできた曲だ。「ローマの休日」でも最も有名なシーン。真実の口。こいつのエピソードを知って、これはいいなと思った。僕は真っ先に食われてしまうだろうなと思っていた。惚れやすく、冷めやすく、偽りだらけ。僕自身がフラフラしてるから、簡単に裏切られるんだろう。
今まで録り溜めていた曲をいっちょ、一つのアルバムにして発表しようと思いたつ。このアルバムを通して僕が一番伝えたかったことは、それでも「僕が歌うことは全て真実だから」ということだ。こんな僕だけど、歌に込めたのは、裏切りや人間不信を経て、それでも僕は人を信じたい、自分の中にある純粋な気持ちを信じたいという想いの結晶だ。音楽が、自分のメロディーが僕を救ってくれた。さりげなく歌詞に勇気という言葉が入っているのも、「おてがみ」から。サビのメロディも、おてがみのセルフパロディだ。これでアルバムがひとめぐりする。
物語の続き、そして完結編。
歌詞にもある通り、これまでみないふりをしてきた自分の気持ちにようやく気づいた僕は、最後の決断を迫られていた。僕の気持ちはまだフワフワしていて、見ないふりをしていた。親友にすら隠していた。カモフラージュのために、夏休みには別の子と遊びにいってみたりして、バンドマンを謳歌していた。そのあたりの心の動きは、「約束の場所」3.Life goes on https://youtu.be/T7aktQcP-Go とか 4.Beauty is truth https://youtu.be/deZxPMGbU9o あたりに記録した。ほのぼのしただけで、恋には発展しなかったようだ。
レコーディングを終えて、マスタリングもして、歌詞カードも印刷して、9月4日アルバムとしてばらまき、賛否両論を得て、ひと段落。その時点で僕の気持ちは揺るぎないものになっていた。
ある秋も深まる夜、お互いの家の中間地点のバスロータリーに呼び出して、思いの丈を、ことの顛末を、できるだけ誠実に冷静に伝えた、つもりだ。今思えば、利己的な独白に近い。自分の気持ちの整理でもあったし、もう伝えなければ苦しいところまで来ていて、これ以上は胸の中に押し込めておけない、という感じだった。なにか具体的に相手にお願いしたいというよりは、ただ聞いて、受け止めて欲しかっただけだったのだと思う。泣いたような気もする。
答えは簡潔に、Noだ。誰よりも仲のいい友達だけど、そうじゃないだということだと思う。あまり記憶がない。だけど、その理由も極めて冷静に、誠実に伝えてくれたし、これでこれまでの関係性が否定されるわけでも、これからの友情が途絶えるわけでもない、といった非常に頭の良い回答だった気がする。その証拠に、翌日からバンド活動を普通に再開しているし、その後も友達だ。
共通の友人のみどりちゃんにことの顛末を報告して、「明日からどういう顔して一緒にバンドやればいいかわからないよー」「バンド解散しようかな」とか泣き言を言ったら、本気で怒られて、あなたたちが築いてきたのはそんな浅い関係性じゃないでしょとか、あんたが笑顔でいないとどうすんのみたいなことを言われた気がする。それで、冬の鼓動のジャケットも引き受けてくれたんだから、懐が深いよな。
そういうわけで、僕一人が子供だったようだ。僕にとっては、確変状態だったし、約束された未来だったんだけど、幸せになれる確約だとか、期待した通りの結末なんてないんだなと、やさぐれた気持ちの結晶がやがて、「約束の場所」という作品に結実していく。
その辺りのことは、1.渇いた水槽 https://youtu.be/DGMpRbonF3k
2.我が奔走 https://youtu.be/FdPrEiwXCG0 に記録してある。今思うと、振られて惨めなところに浮かんできたのが、8.秋の終わり https://youtu.be/L_Hh7jjYNY8 だったような気がする。自分でも忘れていた(解離性健忘だったのかも)。「笑顔のち夏」の続編とも言える歌詞の内容も納得だね。
僕が島本さんと出会ったのはこのちょっとした事件の直後のことだ。でも冬も好きだ。さすがの「真実の口」も開いた口が塞がらないだろう。
ライブ告知
シークレットトラック。客引き用に3秒で作った曲。ギター片手にみんなで練り歩いて集客してた多目というのは多目的ホールのこと。みんなが僕が作った歌を歌ってくれる、それで十分だった。
やがてバンドは引退して、僕は心神を喪失。
ともしび https://youtu.be/7V1df-X7j8w
ムキになって群れから飛び出していく。
vital https://youtu.be/qIEYLuySoto
その先に待っていたのが、冬の鼓動だった。
https://youtu.be/4WYvNKWnR30
渇いた水槽
一曲目に相応しいハイテンションな曲。このアルバムを通して「約束」「期待」「信じる」と「ガセ」「裏切り」「思わせぶり」がテーマになっている。正体不明なものに胸を躍らせ、期待を募らせ、それがガセだとわかってがっかりする。思わせぶりなガセ情報に踊らされて売れ残ってしまった僕。そんなことを繰り返しながら結局生き残ってしまった僕。期待が結局この身を救う? 「渇いた水槽」実はこれが、「心にできた水たまりには氷が張っていて(冬の鼓動)」の伏線になってる。イントロの構想はだいぶ前からあった。グランジを咀嚼して、Guns 'N' Rosesの"Welcome to the Jungle"が僕というフィルターを通って、できるだけポップに仕上げたらこうなった。AメロはビートルズのEight Days a Weekに似てる。ベースはたくさん練習した。彗星が弧を描いてという表現はミスチルの箒星から。実際"落ちていく"感じのコード進行です。最後は見事に落ちてフィニッシュ。
我が奔走
NirvanaぽいグランジとGRAPEVINEを融合して僕なりに咀嚼したらこうなった。「我が奔走」は「我が闘争」のもじり。言葉遊びの歌。パチンコにハマっていた時期に、確定台を掴み取って一日打って終始マイナスという浅はかな経験から。約束とガセ。アルミ缶の上にあるミカンは仮歌だったけどそのまま残った。
Life goes on
なんでこの曲が誕生したのか、まったく忘れちゃったんだけど、曲からできた歌です。当時、まだアレンジとか音質とかpanとかのミックスに悩んでいて、試行錯誤していた時期で、まだ歌詞のない熊木杏里風のイントロ部分を、先輩に聞かせた時に、「おお!みゅー、やったじゃん」と褒められたのは嬉しかった。そういうわけで、歌詞は、モニョモニョ歌っているのに当てはめた感じで、特に文学性とかメッセージはない。仮タイトルは、「クランベリーウォーター」。なんかレコーディングの時にたまたま目についたクランベリーウォーターのペットボトルから。「クランベリーウォーターはうまい!」。次に、「恋せよ乙女」になった。たぶん当時、森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」を読んでいた影響だと思う。「私、恋はしないんです」とぬかしていた女子に、たわけ!と思って一気に書いたような気もする。YESとかNOとか、シャウトするのの原型。今思うと、このアルバムのもう一つのテーマは「生命(ライフ)」なんだと思う。
Beauty is Truth
イギリスの詩人、ジョン・キーツの詩から。Beauty is truth, truth beauty.
昔書いた「Maricha」という曲では、飾り立て変わり果てていく美を嘆き("Are we fated to turn red like autumn leaves?")、真の美しさとは飾らないことである、と気づいた。健康志向が「少しだけ」ってとこがいいですね、って褒められた記憶がある。3拍子の曲って書くの難しいのよ!ちょっとゆずっぽい。間奏では「落ちていく」と言いながら、実質コード進行は上昇している。後輩に、せっきーとダンディーというのがいて、最後「すっぴんも普段着も」のところは、「せっきーもダンディーも」と茶化して歌ってる。ちなみに、この「化粧、おめかし、ブランドもん」っていうのは、お金持ちのお嬢に対するアンチテーゼだったんだけど… そういう虚栄の下に見え隠れする、本当の自分に対する根本的な自信のなさ、その素顔にたまらなく惹かれていくのは、この歌ができてからまもなくのことであった…(続く)
vital
一見恋愛ソング風に見えて人生の歌。部活を引退して寂しい気持ち、研究室配属での戸惑い、新しいバイト、新しい人間関係。何かの終わりは何かの始まり。「意味のない繰り返し」というのは居酒屋バイトのこと。同じバイト先に部活の後輩の女の子がいて、その子がいると癒される、頑張れるという何気ない日常をモチーフに壮大に仕上げた一曲。「暗い夜が明けて また朝日が昇るまで 笑顔 絶やさないでいて」というのは夜勤のホールの子に向けた言葉。ゴールのないレースのたとえは、当時ハマっていたHUNTER×HUNTERのハンター試験から。「足跡だけが増えていくダイアリー」というのは、やはり当時ハマっていたmixiのこと。君というのは特定の誰かのことのようで、自分のことでもある。悩む暇もなく出した結論は「脳」。僕の脳科学が始まった瞬間でもある。どうしても"君"が必要なんだ。「明日も君に会える?」っていうのは、前作「真実の口」の一節から。問いかける必要もないのはそれが自分自身だからだ。安住の地を見つけるまで、誰でもない自分自身の足で歩んでいくんだっていう決意でもある。曲はギターとベースとコーラスだけのシンプルな構成。ボーカルもあえてダブリングしてない。最後、転調したのにまた元の調に戻るのは、"終わりは振り出しに戻る"ということを表したかった。
新しい命
デキちゃった結婚した友達とその子に捧ぐ。心の瞳。そんな子ももう20歳…
秋にちなんだ名前を出し合って、「茜」「紅葉(くれは)」「秋葉(あきは)」で決まりかけてた気がする。ちなみに「秋の終わり」という曲に、「秋葉が土に還るように」という歌詞がありますが、これはその名前が没になったことを歌っています。
もちろん自分の両親のことも想った。「お母さん」っていうとこが恥ずかしかった。
レコーディングしてて、自分で泣いちゃって歌えなくなった。
ところで、このジャケット写真は代官山のカフェで撮ったもの。あのカフェは今もあるのかな?
ともしび
か細いロウソクのイメージ。怒涛の日々を駆け抜けて、部活を引退して、ふと改めて自分の顔を見た時にひどく痩せ細って(なんせ1日200円で生活していたので)、髪も伸び放題で、心は空っぽになってしまった。そんな心境で降ってきた歌。「この世界は 僕が生きて行くには 眩しすぎる」というのはずっと昔から感じてきたこと。「素朴なものは否定されてしまう」というのは、"Beauty is Truthという曲につながっているのかもしれない。"「横目でちらり 素通り」というフレーズが、"Tokyo Walker"という曲にまったく別の文脈で再登場するのにお気づきでしょうか。「消えゆく灯火」という歌詞が、後日"receptor"という曲にも再登場します。間奏のハーモニカは、オフコースの「言葉にできない」。ピアノは猛練習しました。
秋の終わり
無常観を唄った歌。変わり続けることだけが変わらないことだという悟り。
「跡形も」と「あたかも」で韻を踏むセンスよ。「夏の次に秋が来る様に」から始まっているのは、「笑顔のち夏」の「春の次に夏が来る様に」の続きだから。「秋葉が土に還る様に」は、「新しい命」で出てきた「秋にちなんだ女の子の名前の案」=秋葉(あきは)がボツになったことから。
このアルバムのコンセプトは、「約束、ガセ、期待、思わせぶり」でした。それでも僕は何かを信じたいということなのですが。この歌では、一番秋が好きだと言っておきながら、秋の終わりの嘆いているにもかかわらず、最後に「でも冬も好きだ!」とさらっと言ってしまうという、どんでん返しがあります。裏切らないものを探す僕にとっての一番の裏切りは、この心変わり(立ち直り)の早さなんでしょうね。そして、「冬の鼓動」に続く!おめでとう。新たなループの始まりだ。
冬の鼓動
3番目のsingleとして12/2のプレゼントに間に合うようにとんでもなく急ピッチで作られて、12/4に発表。着想からレコーディングして発表するまで2週間とか。地元の初雪が降る前のピンと張り詰めた空気を思い、その一瞬を切り抜くような、瞬間冷凍したような歌が作りたくて。だから歌詞に「今」がたくさん出てくる。過去でも未来でもなく、今。「やがて時間が止まる」。持ってる音楽理論の知識と技術を総動員した力作。初期の集大成、最高傑作だと思う。イントロのコード進行は我ながら神がかってる。後輩が、「新しくてどこかノスタルジック」という評論をくれて嬉しかった。Bメロの歌詞が追いかける奏法は、小田和正奏法と呼んでいる。「ねぇ、今夜辺り降るつもり?」というフレーズは、最初「ねぇ、今夜辺り振るつもり?」だったという製作秘話。そろそろフラれるかなっていう半信半疑な気持ち。「君が刻む不安定なリズム」というのは鼓動とドラムをかけています。当時、ジャケットイラストを友達のミドリちゃんが書いてくれた。半分溶けかかった雪だるまの絵。「溶ける」というのは一連のテーマになっているようだ。
Promised Land
これ以上ないくらい超ド直球なラブソング。レコーディング終盤、なんかキャッチーな曲をと思ってギターを弾いていていて、「おはよう」という頭のフレーズが降ってきて一気に書き上げました。
「どんな遠く離れてたって この空は一つで 繋がっている 真直ぐに飛んで行ける」の部分は、絢香の”三日月”とオオゼキタクの"朝焼け倶楽部"からインスピレーションを受けています。
「約束の場所」というのは、クリスマスの時に花火を見たあの丘のことを思い浮かべましたが、もっと抽象的ななにかなのかもしれません。
「坂道を昇り下って たまには躓いて これまでなんとか生きてきた 独りで」という部分、レコーディング中に感極まって涙が止まらなくなって、一時中断せざるを得ませんでした。
「この体一つで」「この空は一つで」「心は一つで」の部分が秀逸です。
ギターソロの前の部分、空を飛んでいる浮遊感を楽しんでもらえたら。
ギターソロ褒めてもらえて嬉しかったです。
一歩ずつ
アコギと歌のシンプルな構成。モチーフはミスチルの「安らげる場所」。イントロの進行は、Don Rossのアコギにハマっていた時期に夏合宿で思いついて、アコギのインストの曲にしようと思ったけど、ある夜、寝顔を見ながら歌詞ができたので歌にした。一晩の時間の経過と心の動きを綴った。ある人が好きな曲に挙げてくれていて、意外で嬉しかった。
はじまり
クリスマスイブのできごと。昭和記念公園からの帰り道。まだ浮ついた気分のまま頭の中で流れてきたメロディと歌詞をそのまま歌にしました。同じ帰り道に、"独りじゃない"の原型も作っています。原作では、「理屈じゃなくても〜」の部分が、「いくつになっても〜」でした。前作"約束の場所"ではお蔵入り。全体的に、ビートルズ風のアレンジにハマっていた時期。コーラスワークはビートルズの"ビコーズ"風。
Thank you,Sunshine
2006年12月-2007年7月
from「Tokyo Walker」
実は冬にできた夏の歌。「干からびちゃいそう」なのは、空っ風が吹いたから。日傘の威力を知った夏。B'zぽいアレンジにする予定だったけど、吉井和哉の「Weekender」っぽくなった。「雨雲」「太陽が燃えている」。僕は「溶ける」って言ってたけど、彼女はいつも「焦げる」って言ってた。「自信家になり ガチンコを燃やし」の部分は「地震雷火事親父」って歌ってる。ここのメロディは、「炎のキン肉マン」の「倒れるたび 傷つくたび 俺を強くする」から。"You got to be so strong"はJohn Lennonの「How?」から。ギターめっちゃ練習した。指から血が出た。ギターソロは、深田恭子の「スイミング」から。
ブリブリブルース
2007年12月-2008年1月
from「Tokyo Walker」
呼び出されてから振られるまでの数時間を描いた曲で、ものすごく悲しいはずなのに帰り道で曲と歌詞が浮かんできて、帰宅してぐちゃぐちゃな頭で即レコーディングした曲がこれ。自分のセンスを疑う。アレンジは、グランジとグラムロックを煎じて僕なりに解釈した感じ。歌詞に出てくる「しゃべるモンチー」はチャットモンチーのこと。「もうにー」とは僕のこと。
どん底
サビのギターのリフからできた曲で仮タイトルは「愛ヲクレ」。当初は、愛をくれー、飯をくれーってただ欲望を叫んでる曲だったんだけど(サビがダブルメロなのはその名残)、ちょっと吉井和哉っぽくアレンジしてみた。冒頭の悪夢は、当時からよくみていた金縛りの夢。「許されないことなのか? ただ生きていたい それだけのことなのに」というのは、ワンピースのニコロビンが「生ぎだいっ!」って叫ぶところから着想を得ていたはず。「うろ覚え」が「うる覚え」じゃなくて「うろ覚え」だって言うのは後から知った笑。
離れたくない
2006年の11月くらいから曲の原型はあって、部活への喪失感から擬人的に作っていたつもりだったんだけど、今思い出してみれば、これは本当に別れの歌だったのね。短い小曲なんだけど、すごい文学性の高い傑作。内容もありつつ、韻もちゃんと踏めてる。1番は、「この想いが 今日は」2番は、「この想いは 今日も」のところ、はとがの使い分け、日本語って美しいなって思う。想いが空を飛んで君に届けってのは、オオゼキタクの「朝焼け倶楽部」とか、当時聞いてた音速ラインの「流星ライン」影響を受けてるっぽい。「三日月」は絢香の思い出の一曲。ということは、「この空は一つで繋がっている」(「Promised Land」)からの着想。「今日まで積もった」のは「冬の鼓動」からかな。
独りじゃない
昭和記念公園からの帰り道、「はじまり」と一緒に生まれた始まりの曲。コーラスワークがキレイ。「君にふさわしい男になってみせる」「見上げればいつも手を伸ばせば届くところにある」「君の理想をきっと超えてみせる」など、相手を敬う気持ちを表現してみました。フォークキッズのスリーフィンガー奏法炸裂。同じ言葉を二回繰り返すのがフォークソングっぽい。意外とツービートが合う。
君とcaffe
2007年1-3月
from「Tokyo Walker」
甘い日常系ストレートなラブソング。「意味のない繰り返し」こと深夜のバイト中にずっとこんな妄想をしていた。「次のバイトはcaffeにしよう」というフレーズから「僕の空想は果てしなく拡がる」。cafe巡りって楽しいよね。前作「約束の場所」のジャケ写もそんなcafeの画像。代官山。2番の歌詞は実際にそんなcafeめぐり中に思いついた。青山のSunday。「窓の外に見える街は賑わっていて」。"テーブル挟んでカプチーノなんてロックンロールじゃないよな"という和田唱くんの言葉通りになったね。「お客さんで僕がウエイター」「過ごすSunday 憧れた」の韻が秀逸!「君の笑顔はそれを溶かしてしまうよ」。"溶ける"というのが「冬の鼓動」から一連のキーワードになっているようです。cafeとcaffeで表記を迷った挙句caffeにした気がします。当時の僕なりにジャズを咀嚼して解釈したらこんな感じになった。コード進行にめちゃこだわった。終盤怒涛のコードの移り変わりを感じて。ピアノはめっちゃ練習した。特に転調した後が難しかった。
インスタントライフ
旅立つ人へ。卒業ソング。「始まりと終わりの間」を歌った曲。「インスタントライフ」というのは僕の造語だけど、僕らはなんとも、チンと温めて、あるいはお湯を注いで3分の、お手軽で儚いライフ(生活/生命)を始めては終わるの繰り返しなんでしょう。曲中でなるチンという音は、メトロノームの音だけど、あえて残したのは、この温めて完成する「チン」を表していたのかもしれないと今になって気づいた。
冒頭の「誰もが 自分の明日を 予感しながら生きている 宿命を知っていながらも 前向きに生きている」というフレーズは、「意味のない繰り返し(vitalより)」ことバイトの893店長が、「俺も明日は何してるか分からないからな」とボソッと呟いたエピソードをずっとメモしておいたもの。このバイトは、仕事こそ辛かったものの、短い間でもみんなが仲良く楽しくて良い職場だったのかもしれない。また一人消え、また一人去っていく。
「いま、ただ、あま、うま」「後奏、構想、高層、競争」の韻を感じて下さい。「イントロもなく 歌が始まって 後奏もなく 歌が終わって行く」というフレーズができたときから、イントロも後奏もない、歌で始まって歌で終わる曲にしようという構想ができた。「憧れの街にやってきた 誰よりもかけがえのない人を この街で見つけた」という歌詞が、「僕にとって もはや東京は 君の存在そのもの(Tokyo Walkerより)」とリンクします。ピアノめっちゃ練習した。
「また来る春に 胸躍る」は、寺山修司の「さよならだけが人生ならば また来る春は何だろう」から。新しい暮らしの中でも 僕が 帰る場所は まだあるかな?
Tokyo Walker
2008年1-3月
from「Tokyo Walker」
田舎者の描く憧れの東京像満載みたいな思い出を綴った曲。"東京"とつく曲には名曲が多いよね。都心でデートなんてしたことないからTokyo walkerという雑誌を毎月購入して行きたい観光スポットとか話題のカフェとかネタを集めてた(努力家)。まだスマホも普及していない時代の話。Everybody say!みたいな煽りは一回やってみたかったので、その原型は結構前から温めてた。全体的に「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」みたいな編成にしたくて、裏でチュクチュクとかヤンヤヤンヤ言ってるのはその真似。遊び心満載。部室でその辺に落ちてた色んなもので音を出してる。最後にわざと音痴な聴衆みたいなのは、オフコースの「I love you」。ちなみに全部自分。たしかギターのアルペジオは一発録りで(たまにミスってる)、最後に「決まったぜぇ」っていう心の声は、本当にうまくいって喜んでる声。我ながら"Everybody is"と"恵比寿御茶の水"は渾身の韻だと思う。
しあわせ
壮大なラブソング。帰省から帰る飛行機の斜め前の席でずっと赤ちゃんと目が合っていて、笑ったり泣いたりはしゃいだり、くるくると変わる表情をみながら、冒頭の「何が楽しくて 笑っているのかは 分からない」というフレーズから、一気に完成した曲。やっぱり飛行機は感極まる。機内でボイスメモをとるわけにもいかず、飛行機を降りるまで忘れないようにずっと頭の中でリピートしていた。降りて速攻メモを取った。間奏のストリングスは、ビートルズのThe long and winding road。途中自暴自棄になってそんな気分じゃなかったけど、3月のレコーディング中に訪れた束の間のしあわせな気分で録れてよかった。(ピアノはミスってるけど)最後の「ありがとう」というのは自然と出てきた言葉。実は、この曲を最後に音楽活動はやめようと思っていた。
In my life
出来た瞬間からこのアルバムの一曲目にと決定していた。
島本さん事変が収束して生活もひと段落したころ。細々と生きながらえていた僕が、歌がとびきり上手だった彼女との出会いをきっかけに、やめようと思っていた音楽活動が少しずつ顔を出した。このアルバムは、そのあたりの物語だ。
生きる意味を失いかけていた僕は、とある先輩(ギター)に誘われてオリジナルバンドを組むことになる。バンド名は、サディスティク・アンド・ドラマチック・オーケストラ、略してSADO。
先輩はベース男子を連れてきて、ボーカル候補として僕がスカウトしたのが彼女だ。僕が作って彼女が歌う…また生きる意味が見つかった。これからヨロシクな。その一曲目を飾る曲としてできたのが、この曲だ。
始まりの予感。始まりの合図。
歌詞は何てこともない、僕の繰り返す日常生活(Life)だ。
「悲しいことなど 忘れてしまえばいいね」と自分に言い聞かせて。
Aメロのアレンジはもろ、ビートルズのpaperback writer。
https://www.youtube.com/watch?v=yYvkICbTZIQ
サビのテイストは、スピッツの「ウミネコ」っぽい。
実はAメロは、息継ぎのタイミングがなくて、頭から1回目のIn my lifeまで一呼吸で歌っている。めちゃくちゃ苦しかった。2回目のIn my lifeで息切れしているのもまた一興。ラストはオルガンがもっと騒いで、アメリカの野球みたいに騒がしい感じのアレンジもあったんだけど、やめた。
フレッチャー
何かを振り払うように、余計なことを考えないように音楽に没頭し続ける。感情の排泄。キャッチーな曲がバンバン出来上がる。相変わらず韻の踏み方がお上手。「澄んだ音×済んだこと」「さあ皆×Coming up」「踊れ×溺れ」「音に溺れ×ここに上れ」「稀代のフレッチャー×期待のプレッシャー」とか気持ちいい!爽快〜!
バンドで盛り上がる曲が作りたかった。いつものPOPなかわいい曲かと思いきや、いきなり暗転してミラーボールが回り出して、「さぁみんな踊れ!」って言いたかった。Wash awayは「押し合え〜」って言ってるようにも聞こえる。「ステージに上れ!」って「ここ↓」ってマイク持ってない方の手で指差したかった。誰かがダイブしたり、みんなでモッシュしている様子を妄想。一方で、ノリ切れなくて場違いだと思って、すみこっで斜に構えていたり、帰ろうとしている、そこの"メガネ"に向かって指差して「逃げるな!」って言ってる。知性的に振る舞って、感情が動くのを回避しようとするな!って自分の中の"メガネ"にそう言い聞かしてる。
AパートとB-Cパートはそれぞれ別々にできたが、合体したら上手いこと行った。実質3部構成で、A-B-A-B-C-C-Bという珍しい展開。Aメロは、YUKIのメランコリニスタや中島美嘉のONE SURVIVEみたいな、ピアノとストリングスのファンクな感じにしたかったんだけど。B-Cメロあたりは、福山雅治のRED×BLUEに似てる、認める。特にラストのティンパニーの使い方は真似してみた。間奏のキーボードソロかっこええ!
この曲は、僕たち期待のニューフェース、Fleshmanだぜという宣言にしたいと思って作ったんだけど、実際自分は新入生だし。紳士服屋さんが「フレッシャーズスーツ」とか言っていたので、フレッシャーズっていいなと思っていた。「フレッチャー」というのは、昔読んだ『かもめのジョナサン』に出てくるカモメ。ジョナサンの愛弟子。いわゆるセカンドペンギンでありフォロワーシップでもある。どんな宗教も会社も学問も、優秀なフォロワーがいてこそ拡散する。僕自身、恩師のフォロワーに過ぎないが、そこに生きがいを感じていたりする。ジョナサンよりもフレッチャーが好きだった。だから「おれは稀代のフレッチャー」。おれについてこい。そして誰が「次代のフレッチャー」になるのか。そんな思いも自嘲も込めて。
あの日あの時さよなら
バンドメンバーのギターの和泉さんとベースの横山君で町田の芹ヶ谷公園に集まって曲作りをしていた。だから仮タイトルは「芹ヶ谷公園」。和泉さんは、くるりみたいな世界観でミニマルな曲を作りたかったが、僕はやっぱりキャッチーなPOPを作りたくて、バンドクラッシュしたのはそういう方向性の違いもあったかもしれない。くるりの「赤い電車」をよく聞いていたので、ミニマルなコード進行でA-Bメロが出来上がる。サビの部分のメロディは、2007年くらいから存在していて、強引にCメロを即興でひとり作り、サビと結合させて一曲にしてしまった。
A-BメロはこれでもかってくらいのVo多重録音。イントロは「笑顔のち夏」のAメロのパロディで、アンサーソングというかその後を描いている。サビは、別れを描いた曲にしたかった。ミスチルの渇いたkissみたいな少しオシャレなメロ。ここのベースラインは、幸せのカテゴリーを意識した。元々サビが決まっており、16分音符を使うので、そのリズムに合うようにA-B-Cメロを考えた。曲構成は、サビがいいから、最後に一発サビをかまして終われるようにしようと決め、A→Bののちにサビにうまく繋がるような不安定な心情を表現するように、Cメロを考案した。
報われない恋をテーマに詞を書くことが決定しており、Bメロの「どこまでも続く道の果てにさよならさ」はデモの時から存在していた。ある朝、研究室に朝早く行くと当時の助教の先生(女性)がすでに一人で仕事をしているのをみて、なんとなく孤独を感じて「あなたはひとり」というフレーズが誕生した。あるいは、「笑顔のち夏」の主人公だったあの子が、結局あの後ずっと独り身で過ごしていることに対する寂しさを歌ったような気もする。サビの歌詞は、どことなく中学生の頃からイメージしている自分の人生に対するイメージで、手探りで闇をかき分けてないはずのものを探している滑稽さと物悲しさを表現した。最後の、雨の描写は、捨てきれない島本さんへの思いを描いていたような気もする。
女心
前作「Tokyo Walker」のレコーディングが終わって、直後にできた曲。ここでいったん、音楽活動はやめようと思っていた矢先の出来事。この曲がSADO結成の原動力となるわけだが。曲だけ作ってやめようと思ったが、その日のうちに詞も書いた。しかも一週間のうちにアレンジも決めて、レコーディングもやってしまった。島本さんとサヨナラしていた最中。大学卒業、最後のレコーディング曲となった。当時の心境的にマイナーで、しかも歌謡をやりたくて作った。夜な夜な福山雅治と常盤貴子の「めぐり逢い」をひとり寂しく観たりしていた。歌い方も福山雅治を意識した。ギター中心主義から、キーボード回帰のきっかけとなった。
SADOの持ち歌で、僕が打ち込みとピアノ音源を配布して、メンバーそれぞれが宅録して音を重ねたバージョンがある。何度かスタジオで全員で合わせたこともある。アネゴが歌う時は一音上げにする。アネゴには、なんとも優柔不断な歌詞だとツッコまれていた。「忘れたいのか 忘れたくないのか どっちかはっきりしろよワラ」。それも女心。期せずとしてサビは、彼女の好きだった、中森明菜(井上陽水)の「ダンスはうまく踊れない」に酷似。詞も福山雅治を意識して、女視点のものにした。けど、自分の気持ちまんま。Aメロ→Bメロの移行部のジャーンとギターがオフビートで鳴るアレンジは、ギターの和泉さんのセンス。なのこの曲のアレンジはSADO。残りは自分。女の声が入っているなんて言われていたが…イントロのピアノメロがなんともヒステリックで女心。 テンポはMutant Music最速の160。
disturb
典型的なデモテープが良かった曲で、何度も録り直したけど結局、自宅で何気なくとったデモのバージョンを採用した。ピアノはだいぶ練習した。ギターのアレンジは最後にできた。歌詞、デモ当時は「サーンタークロースにあーこがーれてー」だった、意味不明。いずれにしてもだいぶ精神的に参っていた様子が伺える。「愛を誓う」が、「茜空」の歌詞の伏線になっている。
【当時のメモより】
6/8拍子で曲をつくってみたく、また、中森明菜の「ミ・アモーレ」をイシキした歌謡の世界観を目指す。「ミ・アモーレ」のサビ前のメロと(この曲の)Bメロ前のメロが酷似ってかパクり。コード進行からできた曲。ピアノを弾いていたら偶然できた。最初はC#m のキーで作ってた、これもアネゴ用。自分で歌うときはF#m にした。
詞は、二つの愛に板挟みになる女の歌で、なんか複雑な大人な感じ。歌い方は覚えたてのEXILE唱法で、椿屋四重奏風に。ツターツターツターツターツターツタータッタッタが気持ちいいよね。アレンジも椿屋風にしたい。
明日を待ってる
前作「Tokyo Walker」のボツ曲で、「我が道」という曲と「月の数」という別々の未完の曲を無理やり一曲にしたら上手くいったという曲。
この繋ぎの部分が秀逸で、ここの歌詞がすごく好き。気張らず気楽に気負わず行こうというのがモットー。余裕かましてコケろ!というのが白眉。
「本当の勇気とは決して転ばないことではなく、転んでも立ち上がる勇気のことである」という名言が幼少期からずっと心に残っていた(ネルソン・マンデラの言葉だとか)。
島本さんと付き合いだして、それはそれはスキャンダルだったので、そういう気分だったのかもしれない。だれがなんと言おうと好きなものは好き。あるいは、くだらない夢と諦めたはずなのに、というのは音楽のことかもしれないし、脳科学のことだったのかもしれない。誰がなんと言おうと噂しようと、この道で行くって決めたんじゃないかって自問自答している。それはそれでええんか?っていうのは先生の口癖。最後に「明日を待てばいいさ」というフレーズを加えて完成。Tomorrow is another day.
元気日和
島本さんとお別れして、失意のまま、4年間過ごしたボロアパートから引っ越して、進学もして、4月。希望に満ち溢れているはずなのに、憂鬱。朝が来ると、また一日が始まるのかと。朝が来るのが怖い。夜が待ち遠しい。なぜなら夢でまた島本さんと会えるから。現実を忘れていられるから。太陽が眩しい、新緑の季節なのに、前に進めない。「それでもいいさ、僕は僕だ」と自分に言い聞かせる。「君はなりたいものになろうと頑張ってるから」、僕は遠くから応援し続けているよ、僕が君の太陽だよ、と思うことで、少しずつ日常を取り戻していく歌。
間奏前のAメロでコードを変えたのはほんの思いつきだけど、コード感を変えるだけで、気分も変わる、ちょっと見方が変わると生き方も変わる。そんなことを表している。僕は相変わらず元気だよ。僕はきっと最初から最後までずっと元気だったんだよ、そういう気付きだ。
<当時のメモから>
引っ越してきてから初めて作った曲。詞からできた。
間奏前のAメロでコードが変わる。和音の響きを聞いてみてほしい。
詞は、初めから「元気だよ」って言ってるけど最初の方は空元気で、最後は本当に元気になって「元気だよ」って言ってるイメージ。
当時は本当に元気がなかったので、「気楽に行くのさ」と自分に言い聞かせる歌。
洗濯日和ならぬ、元気日和。笑顔日和ならぬ、元気日和。
I love you, I need you
アネゴに向けた最初で最後のラブソング。自分の誕生ソングだったかもしれない。手癖でできたようなベタなラブソング。でも、一時期は音楽はやめようと思っていた僕が、君の歌声に誘われて、また歌い出すきっかけにもなった。朝が来るのが怖いほど、起き上がれないほど、ダウンしていた僕が、また前向きに、そして少しアグレッシブにもう一度生きる勇気をくれた。I love youも使い古された陳腐な言葉だけど。すっと出てきた。どっちかと言うと当時の僕にはI need youだったんだと思う。なかなか自分では受け入れ難くて、当時のメモには「冬の鼓動とどっちが好きですか?」と書かれている。今思うと、妙な捻りもなく、素直で王道のラブソングだと思う。もうこういうピュアな曲はかけないだろう。こだわりがあって、ピアノは入れなかった。その代わりにコーラスワークが美しい曲。坂道の件は、「約束の場所」収録の「Promised land」から始まって、次の「茜空」に引き継がれていく。
茜空
イ段の韻をこれでもかって踏んでる。曲の雰囲気は、スピッツの「青い車」というよりは、吉井和哉の「雨雲」に近い。これは演奏技術も作曲技術も作詞の技巧も、Mutant Musicの傑作。死ぬ時もこれを流してほしい。「日々の静寂に大人になった」は我ながら良い。若者よ、孤独を恐るるなかれ。
当時のメモより:
夏合宿のシェラリゾートをイメージした夏のさわやかソングを作りたくて、スピッツの「青い車」を思い出しながら作った。考えてて、夜中に夢遊病のごとく出来たのがサビのメロ。詞は苦労した。「雨のち晴れて」というのは、仮歌の段階からあり、「夢の続きのような朝に」というのもあり、朝→昼→夜と1日の情景をつづりつつ、夏の1日を切り取ったような感じも出しつつ、"誓い"とか"決心"みたいなものを歌いたかった。過去への決別なのか、やっぱり過去が忘れられなくて、未来を捨ててしまうのか、曖昧な歌。今回のアルバムのテーマ「受容」ということを歌いたかった。
receptor
「真実の口」を歌っていた頃の僕へ。これが成熟だ。
【当時のメモより】
今回のアルバムのテーマ「受容」。その名も「受容体(レセプター)」。町田での対バンを見に行って、帰ってきてひとりぼっちでピアノを弾いている時に、なんとなくできた曲と詞。
(追記:その日、対バンで久々に島本さんを見かけて、アネゴもいなくて(確か出演者で打ち上げに参加していたんだろう)、滝のような土砂降りの"静かな"夜だった。窓も開け放ってピアノをかき鳴らしていた。その時の録音が残っている。)
イメージは、吉井和哉の「バッカ」で、間奏のツインギターソロのハーモニーがキレイでしょ。歌詞は、サビしかうまくできず、Aメロ、Bメロが苦労した。曲の最後は悲しい感じで終わるんだけど、もっかいツインギターソロやって終わる案もあったけど、このまま終わることにした。人生うまくいくことばっかじゃないよなっていう戒めで。
今回のアルバムのもう一つのテーマ「決意」「誓い」。「また笑える日まで」って言っているから、今はまだ笑えてないっていうことなんだよね。受け容れることはできたけど、笑い飛ばせるようになるのは、まだもうちょっとかかるよね。今回はアルバム全体としてそういう雰囲気だと思う。空元気というか、自分に言い聞かせる、自分を励ます感じ。
ソフトボール応援歌
野球は人生だと思う。野球に擬態した人生の応援ソング。引っ越し前の段ボールの山の中で録音した。